ONE HUNDREDTH

中国、小売、マーケティング、ファッションなどなど

中国人が年収200万円でもポルシェを買える理由

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昔の中国のイメージしかない日本人が上海に初めて来て一番驚くのは、豊かになったその生活ぶりだ。近代的な高層ビルの数々に高級車が行き交う街並み。上海ではポルシェをはじめ、マセラティジャガーレンジローバーメルセデスベンツBMW、テスラなど本当に数多くの高級車を見かける。ポルシェにとって世界最大のマーケットは中国であり、その中でも最も売れる都市が上海だそうだ。

一方、彼ら中国人の給与事情はどうか?データの取り方で大きく変わってくるが、2018年の上海の平均年収で約10万元(約160万円)と言われている。毎年給与は上昇しているが、それでもまだ日本の平均の400万円強とは大きな開きがある。もちろんあくまで平均なので職種によって大きく異なるし、中国人は本業とは別に副業している人間も多い。だが、それでも給料ベースで1,000万円以上もらっているような人はまだまだ少ないのが実態である。

では、なぜそのような給与でこのような高級車が買えるのだろうか?車が安いわけではない。むしろ日本より高い。さらに現在、上海などの大都市は車の台数を制限している為、新規でナンバープレートを早期に取得しようと思えば、車両代とは別に100万円以上のお金も必要になる。

それには不動産価格の上昇と、中国語で「動遷(ドンチエン)」と呼ばれる不動産開発に絡む立ち退きが大きく絡んでいる。中国に住んだことのある人なら必ず一度は耳にしたことがある類の話だが、今回はこの仕組みについて紹介したいと思う。

 

上海の富裕層の割合

まず、現在上海にはどれくらいの富裕層がいるのか?「Hurun Wealth Report 2018」によれば、600万元(約1億円)以上の資産を保有している家庭は上海で59.4万戸とのこと。仮に1家庭が3人家族とすると約180万人。上海の人口は2018年で約2,400万人なので、実に上海の7.5%の人が資産1億円以上の生活をしていることになる。

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[出典]速递:2018年中国高净值家庭财富报告 发布_资产

では日本はどうかと言うと、野村総合研究所が2018年に作成した「2017年の純金融資産保有額別世帯数と資産規模についての推計」に寄れば、資産1億円以上の世帯は日本全国で118万世帯あるらしい。これは日本全国の数字なので上海のそれとは比較できないが、仮に半分が東京圏とすると上海と同じ約60万世帯。東京圏の人口は約3,500万いるので、その比率は上海の方が高くなる。

 

格安で不動産を手に入れた都市部の住民

中国で富裕層が増えた理由として、もちろんビジネスで成功して富を築いた人も少なくないが、最も大きな要因になっているのが不動産価格の上昇だ。但し、それには中国特有の不動産の歴史を認識する必要がある。

1949年の建国から1980年前後までの計画経済の時代、中国の都市部の大部分の住民は企業から提供された「社宅」に住んでいた。都市と農村では事情は異なるが、ここでは都市部の話に限定する。工業生産を重視する社会背景の中で都市部に生まれた数多くの国営の大型工業企業は、大量の労働力を都市に集中させた。その膨大な労働力をコントロールするために整備されたのが社宅である。

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[画像出典]再来晒晒曹杨新村老照片(哈啦哨编辑) - 欢网2011的日志 - 网易博客

社宅は医療や教育と同様に福利厚生の一環として考えられていたので、家賃は非常に低価格に抑えられ、一説には世帯収入の1.4%前後とも言われている。どんな家に住めるかは所属する企業、企業内での職位、勤続年数、家族構成などに応じて決められた。社宅は会社の敷地内にあるのが普通で、役所や有力国営企業ほど街の中心部にあることが多かった。これが後に大きなポイントになる。

しかし、この社宅政策はその安すぎる家賃等が原因で、建設投資の回収はおろか維持費さえ賄えきれず、その不足を補っていた国の財政はどんどん逼迫されていた。その状況を打開すべく、1978年の経済の改革開放の流れを受けて着手されたのが住宅制度改革である。

従来の福利厚生としての住宅実物分配をやめ、住宅補助の形式で賃金にその枠を設けて、企業が補助を行う方法へ転換された。そして、土地や建物の所有権と使用権を分け、不動産の所有権は国家にあるが、その使用権については個人や法人に帰属することを認め、その売買や貸借も認めた。この住宅制度改革は1980年代から約20年かけて緩やかに広がっていった。

住宅制度改革にはいくつかの取り組みがあるが、最も大きな影響を与えたのが90年代に入って行われた社宅の払い下げだ。従業員に提供していた社宅の使用権を譲り渡すというものである。社宅の払い下げも福利厚生であり、従業員の職歴や勤務年数に応じて、大幅に割り引かれて販売された。最初は所定の手数料を支払い、自分名義に書き換えるだけというごくごく簡単なものだったようだ。払い下げ後、一定年数転売は禁じられていたが、1994年上海市が全国にさきがけて許可した。

このような流れを経て、中国の大都市では社宅に住んでいた数多くの人が格安の値段で、都市中心部にある不動産のオーナーになるという状況が実現した

[参考文献]

中国人が豊かになったメカニズム - 中国風

上海における住宅制度の転換と住宅市場化-住宅開発に着目して

中国都市住宅制度改革により更新された社宅団地の居住者要求と住環境計画に関する研究

 

高騰する不動産価格

わずか20〜30年前に格安で手に入れた不動産がその後どのようなったか?

下記は1999年からのデータだが上海の状況を見ると、20年ほど前は1平米3,000〜4,000元(約48,000円〜76,000円)だったものが、2016年には約25,000元(約40万円)、実に8倍以上の価格に上昇している。これは上海全体の平均なので、市内中心部に限れば、その上昇率はもっと高くなる。

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[出典]中国:上がり続ける不動産価格と政府の土地依存

下記は不動産のサイトで見た上海各地区の中古物件の情報だ。上段が物件数、下段が1平米あたりの平均価格を表している。

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1平米7万元〜10万元の値が目につく。中国の不動産物件の面積の記載方法は、共用部分を含んだ面積で表示するので、部屋の実効面積はその70〜80%ほどになる。

つまり、例えば1平米7万元ほどの上海の市内中心部で、70平米(実際は100平米ほどが必要)の部屋を中古で買おうと思えば、低く見積もっても 7万元/1平米 × 100平米=700万元(約1億1200万円)もの金額が必要になるということだ。

具体的な物件を見てみよう。これは地下鉄2号線と3・4号線が乗り入れる中山公園の駅前の物件。

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中山公園とは日本人の駐在員も多く住んでいる便利な場所だが、決して高級住宅街という雰囲気の街ではない。東京で言えば上野くらいのイメージだろうか。その街にある156平米(実質は110〜125平米)と広めの部屋だが、2000年築の物件。私もこのマンションを知っているが、外観は決して豪華な作りではなく、ごく普通のマンション。それが1,260万元(約2億円)である。

これは決して極端な例ではない。これくらいの価格の物件は上海市内を見渡せば普通に存在する。近年はやや落ち着きを見せ出しているとは言え、異常な速度で高騰したのが上海の住宅事情である。

 

富を生み出す動遷の仕組み

格安で手に入れた家が、わずか十数年で価格が急激に上昇。ある者は複数手に入れた物件のうち一つを売却して大金を手にしたり、ある者は親から譲り受けた部屋を元手に新規の住宅を投資目的で購入したり、基本的にお金を増やすことが得意な中国人の国民性と合間って、このビッグチャンスを生かした人が多かった。

とは言え、払い下げされた社宅は決して豪華とは言えない。作りそのものは簡素な上、老朽化しており、共同の便所も珍しくない。立地として価値は高いが、誰も好き好んでそんな部屋は買いたがらない。そんな中で、多くの人が大金を手にするきっかけになったが「動遷(ドンチエン)」である。簡体字で「动迁」と書く言葉は、住民を立ち退かせることを意味する。

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急速に経済が発展する過程で、都市部を中心に異常な速度で開発が進んでいく。多くのデベロッパー(市政府も)が古びた家が残る区画を一括で買い上げ、大規模な高層ビルやマンション、商業施設などを次々と建設していった。その際、開発対象の区画に住む住民への補償の基準になるのが動遷政策だ。

補償額は、取り壊す住居の市場価格をベースとして、①部屋の大きさと、②その部屋に住民として登録されている戸籍数で算出される(※現在このルールは変更されている)。今でこそ上海でも核家族化は進みつつあるが、昔は祖父母〜孫までが一緒に暮らす大家族が一般的。そこに6〜7人でも住んでいれば、それに応じた補償がされた。

そして、補償の提供方法としては、郊外にそれ相当の住居を提供される方法(複数の家を提供されることも珍しくなかった)、補償額を現金で受け取る方法、住居と現金の組み合わせで貰う方法もある。こちらで聞いた話では、予め動遷されること見越して、敢えてそこに親戚などの戸籍を移しておいたり、偽装結婚して戸籍を増やすような輩もいたとか。また、動遷で支給された郊外の家も、この不動産価格高騰の波に乗って当初の数倍の価値になることもあったようだ(※数年は売却禁止の規則あり)。

その結果、貰っている給与は200万円にも満たない額にも関わらず、ある日突然、数千万円〜億円もの大金を手に入れる人が続出したのである

 

一方、動遷待ちという人も大勢いることをお伝えしておく。要は市内中心部の立地の良い場所に、今も昔からの家に住んでいる人だ。その不動産自体の価値は非常に高い。もし動遷が起きれば、相当な金額を手に入れることができるのだが、未だに動遷がなく、老朽化した家に大家族で今も住まざるを得ない人たちも存在する。

ちなみに、この不動産価格の高騰は行政にとっても重要な収益源になっている。彼らもかなりの不動産を保有しているので(或いは農民から買い上げたり)、そこの不動産価値が高くなれば、相当な売却益を手にすることができる。以前、上海では今も郊外中心に凄まじいペースで商業施設が開発されていることを記載したが(1年で日本の百貨店の総面積が開発される上海 - ONE HUNDREDTH)、その開発のパワーの源になっているのも不動産である。行政が郊外の土地を用意し、そこに延伸し続ける地下鉄を通し、デベロッパーがマンション、商業施設、病院、学校など街全体を作り出し、周辺一体の不動産の価値を上げる。結果、多額の売却益が入ってくるという仕組みだ。

図らずも手に入れた富によって、市民の生活は僅か数十年で急激に豊かになった。以前は物質的な欲求ばかりを追い求めていた彼らが、今は心の豊かさを求めるようになっている。嗜好も急速に成熟している。中国の経済発展において、この不動産が彼らに与えた影響は計り知れない。

無料で上海視察のガイドやります!

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今日は一つご案内です。

日々、注目を集める中国。その中国の経済の中心地である上海を訪れる方が増えています。私は上海に来て2年が経ちましたが、この2年の間にも、結構な数の友人・知人が上海を訪れています。それも遊びの観光ではなく、仕事或いは自費でも急速に発展する中国を見てみたいという欲求から来られてます。今年1月に書いた「上海で見に行くべきスポット・サービス一覧(2019年1月版)」の投稿もたくさんの人に見てもらい、改めてそのニーズの大きさを認識した次第です。

これまでも友人が上海に来てくれた際は、話題の施設・サービスなどを案内することがあったのですが、今回の投稿は特に私と面識のない方でもご連絡いただいたら無料で上海を案内しますよというものです。

  

提供できる価値

基礎的な中国の情報として、中国ではVPNがないとGoogleやLINE・Facebook等、日本で当たり前に使っている大半のサービスが使用できません。それ以外にも、日本人が普通に使っているクレジットカード(VISA,Master等)も殆どの施設で使えません。話題のキャッシュレスも "原則" 中国の銀行口座が必要です。また、高等教育を受けた今の若い人たちの英語能力は日本人以上に高いですが、例えばタクシーの運転手にホテル名をアルファベット読み(リッツカールトン,オークラ等)で伝えても、まず通じません。漢字の中国名で伝える必要があります。出張者・旅行者に優しくないのが中国です

そんな中国だからこそ、ガイドの価値があると思っています。私ができそうなことは下記内容です。

  • 話題の施設・サービスへの道案内と実際の利用、簡単な解説
  • 要望に応じて視察スポットの提案、視察ルート設計
  • 中国のサービスをできるだけご自身で体験する為のサポート
  • 小売人から見た中国の現状解説
  • その他、上海訪問に関する基礎アドバイス

 

こんな人に最適

私がお役に立てそうな人です。

  • 中国の小売を中心としたテックに興味を持っているが、まだ一度も見たことがない中国初心者。
  • 中国視察に行きたいと思っているが、会社から経費は出ないので、プライベートで行こうと考えている人。 
  • 平日ではなく、週末・祝日を使って弾丸で行こうと思っている人。
  • 大人数ではなく、友人・同僚達との1〜3人での視察。
  • 社会人に限らず、中国でチャレンジしてみたいと考えている学生さんも大歓迎。

(※)一般的な旅行ガイドではありません。視察の合間に上海の観光スポットをまわることはあっても、「この観光地に連れて行って」「このレストランを予約して」というような依頼はお断りさせていただきます。

 

いただきたい対価

所属する会社が副業を認めていないという背景もありますが、お金は一切いただきません。ご飯かお茶くらいご馳走していただいたら結構です。それよりも、ご自身が所属されている会社(学校)・業界の動向などを逆に教えていただければ、他は何も要りません。

 

事前に認識いただきたいこと

下記条件はご承知おきください。

  • 私も普通に仕事していますので、時間が取れるのは、平日の退勤(18時)以降と土日(土曜日は結構な割合で出勤しています)となります。
  • 当然誠意を持って対応させていただきますが、突発的な予定によるキャンセルはご了承ください。
  • 今月(2019年6月)HSK5級を受験予定ですが、私の中国語は正直まだまだ日常会話も苦しいレベルです。
  • これは私個人としての活動です。所属する会社は関与していません。

お金をいただかないということの裏返しになりますが、ガイドのクオリティもそれなりになると思っておいてください。例えば、平日の昼間に案内して欲しい、もっと中国の歴史・現状を深く話して欲しい、現地企業の話も聞いてみたいということであれば、そのようなサービスを提供されている個人・会社に依頼してください。私のおすすめを紹介しておきます。

▼情報発信しながら自らのキャリア開発もされている方です。私もよく彼女のブログを参考にしています。

▼日中でスタートアップと大企業の橋渡しをされている会社です。

 

そもそもあなたは誰なの?

ブログのプロフィールに簡単な自己紹介していますが、得体の知れない人間には依頼し辛いと思いますので、自身の経歴を記載しておきます。

  • 1998年に旧(株)大丸に入社して、かれこれ21年間同じ会社に勤めている40代の百貨店マンです。 
  • 2000年から5年ほどグループのシステム会社に出向し、汎用機を触ってシステム開発してました。COBOL基本情報技術者の資格取りました(笑)
  • CanCamやJJなど赤文字系の全盛期〜衰退期に婦人服のバイヤーしてました。
  • 旧(株)松坂屋との合併後は、本社で所謂デジタルマーケティングの仕事に長く携わってました。その時期に取材してもらった記事の一部です。若いです(笑)

  • SNSや様々なメディアを使って顧客と接触しているうちに、「顧客コミュニケーション」についてもっと深く学びたいと思い、元電通佐藤尚之さんが主催するオープンラボ1期に参加。そこで受けた様々な刺激が今も生きています。

  • その後、本社の販売促進・広告のマネジャーを経験したのち、2017年3月から上海の南京東路にある上海新世界大丸百貨で勤務しています。この店は(株)大丸松坂屋百貨店が事業提携の形で携わっている店です。

 

なぜそんなことをするの?

「なぜタダで自分の時間使ってそんなことをするのか?」思われる方もいると思いますので、自分の思いを書いておきます。

◆インプットを増やしたい

このブログを始めた思いは最初の投稿に記載していますが、中国を自分の強みの一つにしたいと思って始めたものの、ここ最近は投稿の頻度が極端に落ちているのが現状。中国に来た最初の頃のように、もっとインプットを増やしたい。それならば強制的にアウトプットする機会を増やそうという発想からです。

◆自分の価値を知りたい

前述したように私は20年以上同じ会社で働いています。転職をしたことがないので、自分の市場価値が分かっていません。転職エージェントに登録して定期的に評価するのも一つの方法ですが、私はこの活動を通して、自分の現在価値(個人活動とは言え、当然会社の看板があっての評価ですが)を少しでも感じられたらと思っています。

◆自分なりの実験

最近、起業家の光本勇介さんの『実験思考』を読んで刺激を受けたという安直な話です。光本さんのように起業しての社会実験は今の私にはできませんが、自分なりの小さな実験です。こんな1日100〜200PV程度のブログで、どれくらいの人から依頼があるのだろうかと興味がありました。

◆人の役に立ちたい

最後はごく基本的なことです。人の役に立ちたい、人に喜んでもらえたら自分も嬉しいということです。

 

問い合わせ先

話が長くなりましたが、興味がある!頼んでみたい!と思われた方は、気軽に下記メールアドレスまでご連絡ください。お持ちしております。

horamune163@gmail.com

わずか5年で4倍に成長した中国のコーヒー市場

盛り上がる中国のコーヒー市場

2019年2月、上海中心部の人民公園横に新たなコーヒーチェーンが進出し、話題になっている。名前は「Tim Hortons」。1964年創業のカナダ最大のファストフードチェーン店だ。Tim Hortonsは、カナダで販売されるコーヒーの8/10を占めると言われるほど巨大な企業で、 カナダではスターバックスマクドナルドの店舗数も大きく上回るという。

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最も標準的なコーヒーは15元(約250円)とお手軽で、創業時から続く名物のドーナツはじめ、サンドウィッチなどのフードメニューも充実。雰囲気は決して豪華ではないがまずまず環境で、新しいもの好きの上海人が押し寄せている。

この数年、中国のコーヒー市場は話題に事欠かない。2018年にはスターバックスの旗艦店・アジア初の「Starbucks Reserve Roastery Shanghai」がオープンし、上海の観光スポットに加わった。また、アプリ上で注文〜決済まで完了させ、店舗数を急拡大させている「luckin coffee(ラッキンコーヒー・瑞幸珈琲)」の名前をご存知の方は多いだろう。

上海の街を歩けば東京以上にスターバックスの数は多い。日本からの旅行者・出張者には、さぞ成熟したマーケットのように思われるかもしれないが、中国のコーヒー市場はまだまだ成長段階のマーケットだ。

 

中国コーヒー市場の規模

中国におけるコーヒーの歴史は決して長くない。スターバックスの中国進出こそ1999年と日本の1996年から大きな遅れはないが、それまで一般家庭でコーヒーが飲まれることは極めて希であった。このスターバックス1号店がきっかけかどうかは定かでないが、1990年代末からようやくコーヒーが普及し始めたとのことである。

だが、お茶文化が日本以上に広く・深く浸透する中国で、コーヒーが一般層まで普及するのは簡単ではない。急激に市場が広がったのは、この数年内の話である。中国全土の珈琲店は2007年には16,000未満だったが、2018年は14万以上、わずか10年ほどでその数は9倍にも増大している。今では、上海や北京の都市部を見渡せば、外資系のチェーン店から、日本のサードウェーブ系に似た独立系のカフェやスタンドまで多数点在している。

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[出典]中国産業研究院「2018-2023年中国咖啡市场前景及投资机会研究报告」

店舗数の増加に比例して市場規模も拡大。2018年には2,000億元(約3.3兆円)を突破した模様だ。コーヒーブームによって年間消費量が過去最高を更新している日本でも3兆円ほどと言われているので、わずか数年でその規模は計り知れない。

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[出典]中国産業研究院「2018年中国咖啡市场前景研究报告」

しかし、実は国民一人あたりの消費量で見れば、諸外国から比べるとまだまだ少ない。日本人が一人3.3kg/年に対して、中国人は僅か30g/年とのこと。日本のメディアでは順位が若干異なるデータも見かけたことがあり、このデータの正確性は定かでないが、いずれにせよ中国の消費量が少ないというのは間違いなさそうだ。都市部の一部の人には浸透していても14億人の人口全体で見ると、まだまだコーヒーを習慣的に飲む人は少ないということだ。

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[出典]中国咖啡市场搅局者:做到“不是星巴克”,才能挑战星巴克

急速に経済発展が進む中国においては、生活者の嗜好の成熟化も急激に進んでいる。今後は都市部の一部の人だけでなく、全ての世代、全ての都市の人々にコーヒー文化が広がることによって、中国のコーヒー市場はまだまだ拡大が期待されている。2025年には2015年の14倍以上の1兆元(約16.5兆円)に達すると予測しているメディアもある。

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[出典]中国咖啡市场搅局者:做到“不是星巴克”,才能挑战星巴克

 

中国コーヒー市場の特徴

中国のコーヒー市場にはどんな特徴があるのだろうか?日本のコーヒー市場と比較してみたい。

日本のコーヒー市場の歴史

まずは日本におけるコーヒーの歴史をポジショニングマップにプロットして振り返る。それぞれが登場したタイミングでは、従来と異なる切り口で独自のポジションを築いてきたはずだが、ここでは中国との比較の為に、縦軸に価格、横軸にファッション性を取って分類する。味は敢えて分類軸に含んでいない。また、価格はそれなりに実態を参考にしているが、ファッション性については筆者の主観に基づく。

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日本のコーヒー市場の歴史とポジショニングマップ(筆者作成)
  1. 日本にコーヒーが持ち込まれたのは17世紀末と言われているが、本格的にコーヒーが普及し出したのは1950年代の喫茶店ブームである。(当時は喫茶店がお洒落な業態だったのだと思うが、現在のイメージで左上に置いている)
  2. 1969年に缶コーヒーが登場。低価格でいつでも飲めるコーヒーとして大衆に広がる。
  3. 1980年代に入ると、セルフ式のコーヒーショップが登場する。比較的低価格で、休憩もできて、美味しいコーヒーが飲めると、サラリーマンの支持を集める。
  4. 1996年にスターバックスが銀座に1号店を開店。その洗練された空間と相まって、それまでコーヒー=大人・オジサンのイメージを払拭し、コーヒーがお洒落な飲み物として若者・女性にも広がる。
  5. 2013年には日本人の生活インフラであるコンビニにオリジナルコーヒーが登場。これまで缶コーヒーには満足できなかった層も、いつでもワンコインで美味しいコーヒーが飲めるということで爆発的ヒットに。
  6. 更なるコーヒーの発展系の代表として、2015年にはブルーボトルコーヒーが日本進出し、サードウェーブブームが起きる。
  7. 一方、コーヒーが老若男女に広がる中で、昔ながらの喫茶店の価値も見直される。喫茶店の発展系として、ゆったり寛げる空間と充実したフードが魅力のコメダ珈琲も幅広い層の支持を集めている。

歴史の中で淘汰された店・業態も多々あったと思うが、活況を呈する現在の日本のコーヒー市場の特徴として、各業態が独自のポジショニングでそれぞれ支持を集めているということではないだろうか。成熟した日本のコーヒー市場では味が美味しいのはもはや当たり前で、それ以外に価格や快適&洗練された空間など、どんな価値を提供できるか明確でないと支持されない。味をとことん突き詰めるというのも一つの選択手段だろう。日本では多様な市場構造が築かれている。

 中国コーヒー市場のポジショニングマップ

一方、中国(上海)のコーヒー市場だが、同じ分類で主だった店を分類してみる。ここでは独立系のカフェ・スタンドは含まず、チェーン展開しているものに絞って整理してみる。

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中国のコーヒー市場のポジショニングマップ(筆者作成)

それぞれの象限に日本と同じようなプレーヤーは存在しているが、市場が成熟していない分、ブランドが分散しておらず(=ポジショニングがハッキリしていない)、中央の似たような価格帯、似たようなファッション性の位置にブランドが集中している。 

縦軸の主な価格帯を紹介しておくと下記の通り。(※以下は全てトールサイズのカフェラテの価格)

  • スターバックス:29元(約480円)
  • ラッキンコーヒー:24元(約400円)
  • コンビニ:12元前後(約200円)
  • Arabica Coffee:40元(約660円)

日本のスターバックスだと税込410円なので、中国のスターバックスは日本より2割近く高い。2018年の上海の初任給平均が約6,000元(約10万円)と言われているので、その高級さがご理解いただけるだろう。ラッキンコーヒーは2杯飲むと1杯無料などのクーポンを発行しているので、実際の購入価格はこれより安くなるが、中国人にとって決して安くはない飲み物である。

近年話題の「ラッキンコーヒー」や「コーヒーボックス(連珈琲)」など、Techを活用したスタートアップ企業の進出も目立つ。 彼らは主にデリバリーを中心に運営している店が多く、実店舗はカウンターだけの店も多い。決して立地の良くない小さなスペースでも出店が可能な上、初期の設備投資も抑えられるので、出店スピードを早められるということだ。但し、市場の注目度合いに反して、実態は急激な店舗拡大や無理なクーポン販促によっていずれも赤字状態が続いており、資金調達が止まれば第2のofoのになりかねない。

また、古株の「Costa Coffee」はコカコーラに身売りしたり、日本のUCCとは何ら資本関係のない「上島珈琲」は閉店が続いており、市場全体は拡大しているものの企業間の淘汰は激化している状況だ。

 

特徴① 若年層が支えるマーケット

中国のコーヒー市場の最も特徴的なことは、若者、特に女性に支えられているということである。美団が主要16都市で実施したアンケートに寄れば、35歳以下の顧客で8割近くを占め、且つ、その7割近くが女性とのこと。流行に敏感で海外の文化に抵抗のない若者が起点になっている。大人の男性から広がった日本とは全く逆の構造だ。

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[出典]美团点评研究院「2017中国咖啡行业生存状况报告」

国民一人あたりで見れば消費量が少ないことを前述したが、確かに私の周りを見渡しても、仕事中、恒常的にコーヒーを飲んでいる中国人は少ない。飲んでいるのは、ほぼ20代の若者。40代以上の人間がコーヒーを好んで飲んでいる姿はあまり見たことがない。彼らが仕事中に飲んでいるのはお茶。自分専用のポットや水筒に茶葉を入れて、お湯を足しながら飲んでいる。私の周りの中国人は典型的な上海人で裕福な生活をしており、お金に困っている人間ではないので、コーヒーの価格は関係ない。嗜好の問題である。また若者であっても、地方から出てきたてのような人間も海外の文化に慣れていないことが多く、コーヒーを好まない人間が多いように感じる。

 

特徴② 自己表現手段としての体験消費

若者が支えているマーケットということに関連するが、中国ではいかにSNSでアピールできるか、日本以上に体験消費の側面が強い。もちろん味が不味いのは論外だが、一定以上の味をクリアしていればOKで、あとは「インスタ映え」ならぬ「微信(WeChat)映え」する為に、お洒落な空間とブランドイメージが重要となる。

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上記は大衆点評から引用した「% Arabica Coffee」もの。オーナーは日本人で京都の嵐山等にも店舗があるのでご存知の方も多いだろう。2018年に上海のお洒落スポットの一つ武康路に1号店ができると、たちまち新しい物好きの若い上海人女性たちで行列ができた。白で統一された店舗デザイン、その対比が写真映えする緑、ブランドロゴである「%」マークがアイキャッチとして機能し、SNSでシェアするには最適だった。その後、2号店を観光客や欧米人も多い外灘に路面店をオープン、3・4号店は若い女性に支持されるショッピングセンターを選んで出店している。

中国の小売全般に言えることだが、コーヒー市場も流行に敏感な若年層が消費をリードしているので、マップの左上に位置するようなファッション性の低く、値段も高いブランドは中国では厳しい。上島珈琲がこのゾーンに位置するかもしれないが、大人が落ち着いてコーヒーを楽しむという文化はまだまだ少ないように感じる。

 

今後の発展の方向性

現在はマップの中央部分が市場のボリュームになっているが、今後は都市部では中価格帯の割合が減少し、二極化が進むものと予想する。

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 ①更なる高級化&ファッション化

一つはマップの右上に上がっていく動きが更に加速するという方向性だ。かつてはスターバックスでコーヒーを飲むことがお洒落だったが、今ではスターバックスも一般化し、若年層のトレンドリーダーたちが満足できる店ではなくなっている。そんな人たちがより高級でお洒落な店を求めて前述のArabica CoffeeやStarbucks Reserve Roasteryにシフトしている訳だが、中国のコーヒーの消費傾向から見れば、このゾーンはまだまだ開拓の余地がある。日本にサードウェーブ系の流れを吹き込んだブルーボトルコーヒーのような強力なブランドもまだ存在しない。中国ブランドがこのポジショニングを築けるとは考えづらく、新たな黒船が登場すれば、更にこのゾーンが拡大する可能性がある。

②低価格化&日常化

もう一方は、反対に左下に下がっていく動きだ。今のハレの日消費のようなファッション的側面から、よりコーヒーが日常的に幅広い顧客層に一般化するには低価格化が欠かせない。前述の通り、話題のラッキンコーヒーもコンビニコーヒーも中国人の平均所得から考えると、決して安い商品ではない。

また、味にもまだまだ課題がある。個人の感想にはなるが、ラッキンコーヒーは不味くはないが、美味しいとも言えない。スターバックス以下、コンビニ以上、ごく一般的な味という印象だ。コンビニコーヒーにおいては、日本のものとはかなり味に差が開きがあり、まだまだ改良が求められる。中国のコーヒー市場がより成熟し、消費者の味に対する要求が高くなるに従って、より低価格で質の良いコーヒーが開発されてくるだろう。

③地方都市での開発の活発化

最後3つ目の動きは、現在市場でボリュームになっているブランド群の2・3級都市での開発だろう。上海や北京の1級都市には既にかなりの数の店があり、物理的な出店余地が少なくなってきている。更に消費者の嗜好が成熟化してくると、ボリュームの価格帯&イメージのブランドはより厳しくなってくる。そんな彼らが狙う市場は、まだまだ開拓仕切れてない、消費者の嗜好も大都市ほど成熟していない2・3級都市になってくる。 

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[出典]美团点评研究院「2017中国咖啡行业生存状况报告」

直近の報道では、ラッキンコーヒーが合肥仏山昆明など新たに14都市に出店し、進出都市数は36に広がったとのことである。

内陸部のおじいちゃん・おばあちゃんがスターバックスやラッキンコーヒーでコーヒーを飲みながら団欒している光景も、そう遠くないうちに当たり前になってくるかもしれない。

上海で見に行くべきスポット・サービス一覧(2019年1月版)

先日、日本からの友人達に上海を案内する機会がありました。生憎1日という限られた時間だったので全てを廻ることはできませんでしたが、どこを案内すべきか検討した際にスポット・サービスをリスト化したので、このブログにもUPしておきます。

 ※変化の激しい中国では、新しく出来た施設・サービスが半年後、いや数ヶ月後に無くなっていることも不思議でないので、見に行かれる際はご自身でも事前に確認願います。 

 

視察に当たっての参考情報

(1) 旅行者がWeChatペイを使う方法(2019年1月時点)

日本人が今、一番中国で体験してみたいと思うのが「キャッシュレス社会」だと思います。以前このブログでも中国視察の前に準備するべきこととして、旅行者・出張者がWeChatペイ・Alipayを使う方法を紹介しました。

しかし、上記エントリーで紹介しているWeChatペイ・Alipayを既に利用している人から送金してもらってチャージする方法は、現在できなくなっています。

お金を受け取ろうとすると、銀行カードの紐付けを促すメッセージが表示され、先に進むことができません。2018年中頃あたりから、この方式が使えなくなったという噂を耳にしていましたが、現実でした。 結局、今回友人達は自身でキャッシュレス社会を体験することができなかったのですが、詳しい方の情報に寄れば、クレジットカードでアクティベートまでしたのち、日本の空港等に設置されているポケットチェンジを使ってチャージする方法であれば使えるとのこと。これから中国に来られる方は、是非この方法を試していただきたいと思います。(※できた!できなかった!等の情報もお待ちしています)

▼2019年3月1日追記

ダメだと思っていたAlipayも、こちらにまとめられている方法で登録&使用できた(2019年2月末時点)という情報がありました。

(2) 視察は必ず中国在住の人と一緒に

中国の大部分のサービスは中国人 or 中国に住む人の為に作られています。中国の携帯電話を持っていない&中国に銀行口座を持っていない旅行者・出張者には使えないサービスがほとんど。仮に上記WeChatペイのチャージはできたとしても、旅行者・出張者だけでは体験できないことが多々出て来ます。

視察に際には、現地に住む友人やコーディネーターに同行してもらうことを強くお薦めします。自分たちだけで廻って中国人が使う様子を見ているだけとは得られる情報・体験がかなり変わって来ると思います。

(3) 大衆点評・百度地図は街歩きに必須

今回のエントリー内に貼っている多くのURLは大衆点評のものです。中国版食べログと言われてますが(実態はもっと多様な機能を備えている)、飲食店だけではない様々な店舗情報が掲載されているので、行きたい施設を調べる際には必須アイテムです。

また中国ではGoogle Mapも正常作動しないので、中国版の地図アプリも必須です。個人的には百度地図が好み。日本のApp Storeからもダウンロードできますので、事前にインストールしておくことをお薦めします。

 

オススメ視察スポット

無人小売系

2016年末にAmazon Goの構想が発表されて以降、それに先行する形で2017年から急速に広がった中国の無人ブームは、既に一周まわって収束に向かっているのが実態です。また、一言で「無人」と言ってもその形態は様々で、主に4つのタイプに分けられます。

タイプ①:ウォークスルー決済型

これが一番日本人がイメージする「無人」に近いと思います。Amazon Go風のレジを必要としない、歩いてゲートを通るだけで会計ができる店舗。画像・重量センサーやRFID等を使って商品をトラッキングし、顔認証やアプリを使って店舗を出ると自動的に決済が行われている仕組み。

◆简24 http://www.jian24.com/

上海でこのタイプの店舗を牽引したコンビニです。しかし、話題性に反して店舗の改廃が激しいので、最新の店舗情報は上記サイトからアプリをダウンロードして確認してください。ちなみに、2018年夏頃に撮影したこの写真の店は既になくなっています。

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◆云拿无人便利店 http://www.dianping.com/shop/12244223

虹橋空港内に新しく出来た無人コンビニ。「简24」の店舗が減少・縮小されている状況下では、今、一番整った無人環境が見られる店舗かもしれません。

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◆志达书店 http://www.dianping.com/shop/3260125 

復旦大学のすぐ側にある書店。本には全てRFIDが貼られており、顔認証での決済ができます。過去2回見に行きましたが、一度も顔認証での決済はできていません(笑)。中国ではあるあるの話です。

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◆苏宁电器 http://www.dianping.com/shop/4553616

大手家電量販店の蘇寧電気の五角城の店舗内にあるコンセプトストア。顔認証とRFIDの組み合わせによる無人店舗。

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タイプ②:無人コンテナ型

当初、中国の無人ブームを牽引したのがこのタイプ。コンテナのような外観の小さな店舗で、入口の扉は鍵がかかっており、スマホで認証してから入店。無人のレジで自分で会計すれば出口が開く仕組みです。タイプ①③の店舗にはスタッフがいますが、ここは本当に無人です。但し、商品数が少なく、劇的な顧客体験の向上も無かった為、利用者は増えておらず、店舗も広がっていません。

◆欧尚(旧BINGO BOX)

下記エントリー時のBINGO BOXの名前での店は無くなっており、同じ場所で支援していたスーパー「欧尚」の名前に変わって運営されています。

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タイプ③:セルフスマホ会計型

店舗の作りは一般のコンビニやスーパーと同じですが、支払方法だけ異なり、顧客自身で会計するセルフ方式です。セルフ方式と言っても専用レジがあるのではなく、アプリ・ミニアプリを使って購入したい商品のバーコードをスキャン。モバイル上で支払いするとバーコードが表示されるので、退店時にそのバーコードと商品を店員に提示する流れ。会計の列に並ぶ必要はありません。個人的には、この方式が一番日本でも導入しやすいのではと思っていますが、派手さはないので友人達の反応はイマイチでした(笑)。

◆猩便利 「猩便利」をApp Storeで

新興コンビニでゴリラのイラストがマーク。店舗数はどんどん増えており、最新の店舗情報は上記アプリから確認してください。

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カルフール(天山店) http://www.dianping.com/shop/103605009

中国で苦境に立たせているカルフールがテンセントとコラボした店舗。カルフールはレジを順次刷新しており、中山公園など他の店舗でもこのタイプを見られるようになっています。

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タイプ④:自動販売機拡張型

自動販売機だから無人なのは当たり前ですが、一般の自動販売機との違いは、商品は扉の開閉が可能な冷蔵ケースに格納されており、商品管理にRFIDやセンサーが用いられている点。従来の缶やペットボトルが主流の自動販売機と違って、様々なパッケージの商品を取り扱うことができるので、品揃えの幅を増やせることが可能です。当初「Take Go」が話題になりましたが、駅やショッピングセンター等でたまに見かけることができます。

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ニューリテール・スーパー 

アリババがニューリテール(新小売)構想を発表して以降、その象徴的な存在として、日本でも様々なメディアが取り上げている話題のスーパーです。そのアリババに対抗して、テンセント陣営からも似たようなスーパーが開発されています。 

◆盒馬鮮生 「盒马-鲜美生活」をApp Storeで

EC倉庫としての機能も果たす店頭を動き回るピッキング担当、天井に張り巡らされたベルトコンベア、顔認証決済もできるセルフレジ、見ていて楽しい豊富な海鮮類、その場で食べられるレストラン機能、変わり種の自動販売機など見処は満載。中国に来たからには絶対見るべきスーパーです。順次店舗は増えているので、最新店舗情報は上記アプリから確認ください。

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◆超级物种 App Store 上的“永辉生活”

盒馬に対抗する形でテンセントが支援、資本提携する老舗スーパーの永輝が開発している新店舗。 盒馬の二番煎じ感は否めませんが、同様にオンラインとオフラインの融合を図っています。オーガニック食材にこだわった「永輝超市」もあります。ちなみに、テクノロジーとは関係ありませんが、ここのロブスターのUFOキャッチャーは盛り上がりますので(笑)、是非チャレンジしてみてください。こちらの店舗情報も、上記アプリ(※中国のApp Storeのみ)から確認してください。

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シェアリングエコノミー

この分野でも世界をリードをする中国。既に淘汰されたサービスも多々ありますが、まだまだ熱いカテゴリーです。

◆Mobike 「Mobike モバイク - スマート バイクシェアリング」をApp Storeで

もはや説明不要のシェアバイク。日本の携帯&日本のクレジットカードで利用できます。上海は坂もないので、街歩きの足として利用してみてください。ライバルだった黄色のofoの自転車はどんどん街から減っていってます。

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◆DiDi  

これも説明不要のライドシェア。上海の生活には欠かせないサービスです。最近、日本でもローンチしたことによって、日本のアプリと中国のアプリが別々になり、中国用のアプリは中国のApp Storeからダウンロードする必要があります。中国版でも日本のクレジットカードで支払いできるようですが、旅行者が利用するには少しハードルが高いかもしれません。

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◆磨伞(シェア傘) App Store 上的“摩伞”

以前、このブログでも紹介したシェア傘「磨伞」。各地下鉄の駅で見かけることができますが、最近になって利用できなくなり出しています。そろそろ消えそう?

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◆怪兽充电(モバイルバッテリー)

これも日本にもあれば良いのにと思う非常に便利なサービス。街のレストラン等に設置されているので、保証金を払った上で(芝麻信用の点数が高ければ不要)で登録すると充電器を取り出せます。返す時は、その時にいる場所から最寄りの返却可能箇所をアプリ上で探して、返却。借りた場所と同じである必要はありません。時間制で課金されます。カフェ・レストランなど至る場所で見かけることができます。

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Tech飲食・レストラン 

モバイル決済をはじめ、多くの小売・飲食で何らかのテクノロジーが活用されていますが、特に話題&面白い店をご紹介。

Luckin Coffee 「luckin coffee 瑞幸咖啡」をApp Storeで

スタバを抜くと日本でも話題になっているコーヒーチェーン。注文・決済は全てスマホ上でおこない、店頭に取りに行くか配達してもらうか選ぶ。店舗は異常な速度で増加中。最新店舗は上記アプリから確認してください。中国携帯とAlipay or WeChatでの支払いが必要です。個人的には店舗数の拡大が早すぎて、第2のofoにならないか危惧しています。

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◆喜茶(Hey Tea) 喜茶HEYTEA--唯一官网

2018年頃から人気に火がつき、ピーク時は2時間待ちの店があったほどの話題店。お茶とクリームチーズ組み合わせた飲み物で、店が増えた現在も今だに行列が続いています。喜茶を真似た第2・第3のブランドも続々と出現。味は確かにまずまず美味しいですが、そこまで並んで飲みたい?というのが正直な感想。これまでは飲みたくても並ぶのが面倒だったのですが、一見客が一巡し、話題性が鎮火してきたこのタイミングでミニアプリ「喜茶GO」をリリース。これを使って事前注文しておけば、並ぶ必要がなくなります。店舗は人気のショッピングセンターを選んで出店しています。上記WEBサイトで確認ください。

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◆Ratio  http://www.dianping.com/shop/108201326

下記写真をご覧いただいて分かる通り、ロボットが酒・カフェを作ってくれる店です。人民広場のラッフルズにあります。店員曰く、カクテルが一番ロボットの見栄えが良いとのこと(笑)。日本人の感覚だと、ロボットの費用、上海の一等地での家賃等を考えると採算が合わない気がしますが、そこは投資先行型の中国。面白い店が仕上がっています。

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失重餐庁 http://www.dianping.com/shop/108326453

これはまだ行ったことがありませんが、宇宙をテーマにしたレストランができたそうです。たきさんのブログで詳しく説明されています。まぁこれはテクノロジーというより、エンタメレストランという感じですが、こういうのも中国ならではの気がします。場所は世紀大道です。

 

無人その他  

小売の無人ブームが沈静化したのは前述の通りですが、それ以外も様々な無人サービスが存在します。

◆カラオケBOX

街の至るところでこのようなミニカラオケBOXを見かけます。定員は2名までで、ヘッドホンをして歌います。もはや中国では当たり前ですが、現金での支払いはできません。ちなみに、友人はこれが一番面白かったと言ってました。

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◆化粧ボックス

こちらもたきさんのブログから。様々なブランドの化粧品を使って化粧ができる無人化粧ボックスです。これが果たして儲かっているのかどうかは分かりませんが、ひらめいたアイデアを即実行に移して、短期間で実現してしまうというのが中国の強みです。

 

ブランド旗艦店  

最後は、これまでとは毛色の異なるもので、ブランドの旗艦店です。今まで世界のトップブランドにとってアジアで一番重要なマーケットは日本、アジアで一番最初に進出するなら東京だったと思いますが、スタバやNIKEの旗艦店を見ていると、もはや世界が重要視しているのは日本・東京ではなく、中国・上海に確実に変わっているのだと感じさせられます。 

Starbucks Reserve Roastery Shanghai Shanghai Roastery | Starbucks Reserve

2018年のオープン以来、上海の名物観光スポットに加わったスタバの新業態。場所は南京西路。「世界中から調達した最も個性的なコーヒーの焙煎と抽出を楽しめる」といことで、3000平米弱ある巨大店舗の中には、超巨大な銅製ロースターが設置されています。2019年2月には、上海に続いて東京・中目黒にもオープン予定とのこと。

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NIKE House of Innovation Nike House of Innovation in Shanghai - Nike News

大規模リニューアルを経た人民広場にある世茂ショッピングセンターの中にオープンしたNIKEの新業態。デジタルとリアルの店舗体験の融合を図っており、ニューヨークに次ぐ2番目の店。未来感ある店舗に仕上がっています。約4000平米ほどある店舗には、オリジナルシューズを作れるLabや、ナイキのエキスパートスタッフから1対1でアドバイスを貰えるような機能もあります。

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無印良品(上海淮海755) 無印良品 上海淮海755 | 無印良品

中国人からの支持も高い無印の中国最大の店舗。本と商品の編集売場「MUJI BOOKS」や、顧客とのコミュニケーションスペース「Open MUJI」、さらに2018年には「MUJI Diner」もオープンしました。

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UNIQLO UNIQLO SHANGHAI(上海淮海路全球旗舰店) - UNIQLO

こちらも人気のユニクロの旗艦店。2013年にオープンした約6000平米ほどの店舗。地下にはGU、最上階にはディズニーとのコラボショップもあります。商品自体は大きく日本と変わらないので、日本人からすると珍しくはないと思いますが、無印しかり、中国人の消費動向を見るには良いと思います。

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以上、いかがでしたでしょうか?全てをまわろうと思えば、最低2日は掛かります。特に最初に紹介した無人小売の店舗は郊外にしかないので移動に時間がかかります。事前の情報収集と視察ルートの検討は必要かと思います。最新の中国・上海を感じ取ってみてください。

 

▼2019年6月5日追記

自分なりの小さな実験として、無料で上海視察のガイドを始めることにしました。詳しくは、下記をご覧ください。

新小売に課題を残したアリババの独身の日

最高売上を記録したが…

2018年の双11(※11/11の独身の日のこと。シュワンシーイーと読む)が終了した。今年のアリババの売上は2,135億元(約3.5兆円)・対前年+26.9%となり、成長率はこれまでより鈍化したものの過去最高売上を達成した。この額には事前の予約購買等、様々な売上を合算していると想像されるが、いずれにせよ凄まじい売上規模である。

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アリババの独身の日の売上推移(筆者作成)

私にとっては上海に来て2回目の双11だ。去年、現地で始めて双11を体験し、これはもはやアリババのお祭りではなく、オンライン(EC)・オフライン(実店舗)を問わない中国の小売業全体のお祭りだと記した。実店舗にも「買い物しよう」という空気が満ち溢れていたのだ。

そして、2018年。今年の双11は日曜日ということもあって、実店舗も前年(2017年は土曜日)以上の盛り上がりを期待していた。しかし、上海の街の雰囲気は去年と明らかに違っていた。各商業施設の集客・盛り上がりは去年ほどではなく、明らかに買い物ムードが減退していた。個人の感覚で申し訳ないが、案外こういう小売人の感覚は当たっていることが多いので、自分でもそれなりに信じるようにしている。

日本でもアリババの売上規模については様々なメディアで報道されているが、今回はあまり語られていない実店舗の状況をレポートしてみたい。 

  

【 前提事項 】 

大前提として、今年は11/5(月)〜10(土)まで上海で「輸入博覧会」が開催されたことが大きく影響している。日本ではご存知ない方が多いと思うが、この輸入博覧会は習近平氏の肝煎りプロジェクトで、各国から要人が訪中し、この1週間、上海の街は厳戒態勢となった。   

日本人には理解し辛いだろうが、中国で政府・習近平氏が旗を振っているイベントとなれば、現場の気合いの入り方は半端ない。何ヶ月も前から周辺の道路は整備工事がされ、要人が通る道路に面したビルの窓はすべて封鎖された。

挙句1ヶ月前になって、上海市から開催日の11/5(月)・6(火)を休みにし、11/3(土)・11(日)を振替出勤するようお達しがあった。大部分の人にとっては直接関係ないイベントであるにも関わらずだ。これは強制ではなかったものの、事実、独身の日の11/11が出勤になった会社(学校も)も一定数あったようである。博覧会は前日の11/10に終了したとは言え、その後遺症があったことは否めない。

 

独身の日の圧倒的な露出

今年も10月中旬頃から、オンライン・オフライン問わず双11の露出が激しくなった。輸入博覧会の告知もあるものの、地下鉄各駅はじめ、人目につく主要なメディアはほぼ双11がジャック。期間中は双11以外の広告を探す方が難しいくらいであった。去年はアリババ一色だったが、今年は競合の京東の露出も増えた印象だ。

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変わり種では、WiFiのネットワーク名を使った広告も見られた。上海の地下鉄には「花生地鉄」というアプリを使ってWiFiが使える路線があるのだが、普段は「花生地鉄WiFi」しか表示されないところに「天猫双11十周年」のネットワークが。世代問わず日本以上にスマホ中毒者が多く、フリーWiFiを探す&繋ぐのに慣れている中国・上海の生活者に対して、地下鉄という閉ざされた空間で日本のように視線を傾ける車内吊り広告もなければ、このようなアプローチは案外有効なのかもしれない。

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そして、今年も直前の11/10の夜には記念番組がTVで放映された。ミランダ・カーマライア・キャリーの他に、日本からも渡辺直美が出演し、お得意のビヨンセダンスを疲労して会場を盛り上げた。

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アリババの2018年独身の日の特徴

今年のアリババの双11の特徴は、何と言っても彼らが掲げる「新零售(新小売)」の取り組みをアップデートさせたことである。 

(1) チーム・アリババ での取り組み

核となる「天猫(Tmall)」「淘宝」だけでなく、アリババ自身のリソースのフル活用し、傘下のプラットフォームや実店舗型小売でも双11の取り組みがおこなわれた。

  • 飛行機やホテルの予約などトラベルEC「飛猪(フェイジュー)」
  • フードデリバリーの「餓了么(アーラマ)」
  • 食を中心とした口コミ&O2Oサービスの「口碑(コウベイ)」
  • スーパーの「盒馬鮮生(フーマーシェンシャン)」「大潤発(ダールンファー)」
  • 家電量販店の「蘇寧(スーニン)」
  • 杭州を中心に展開する百貨店の「銀泰(インタイ)」
  • 家具などリビング用品を扱う「居然之家(ジューランジージャー)」 など

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天猫、口牌、盒馬、それぞれ当日のアプリTOP画面

銀泰の旗艦店である杭州の武林総店では、一部のブランドでオンラインと同一価格での販売、紅包のプレゼント、ライブ中継イベント、無料バスの運行、ストップウォッチを11.11秒ジャストで止められたらプレゼント進呈など、様々なイベントが展開され、当日の売上は対前年+34.2%を達成。そして、銀泰全店の期間合計(11/1〜11)売上は、対前年+36.7%になったそうだ。 

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 ※画像出典:銀泰のWeChat公式アカウントより

 

(2) グループ外の実店舗との取り組み

もう一つは、アリババのグループ外の小売も巻き込んだ取り組みである。今年は400都市の20万店舗がアリババの双11に参加したとのこと。

オンラインの世界で大きくなったアリババが、今後は、オンラインとオフラインを融合する新小売プラットフォーマーとしてのポジションを築く為の取り組みと言える。特徴的なものを紹介してみたい。

 

① Offline → Online → Offline

これは上海の中山公園駅の隣接している「龍ノ夢」という地元密着型のショッピングセンターだ。入口には天猫の双11が大きく告知されている。

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店内に入ると、各ショップの前にはQRコードが書かれたPOPが設置されている(下記写真左)。このQRコードを天猫のアプリで読み取ると、そのショップのクーポンや紅包が獲得できる仕組み。天猫のオンラインで使用できるものもあるが、その多くはオフラインの実店舗専用のクーポンである。他に参加しているショップも地図で表示されるので、気になる店舗を複数まわってクーポンを集まると、更なるインセンティブを獲得できるスタンプラリー型の販促だ。 

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これまでの感覚であれば、実店舗で天猫の告知をすると実店舗の売上が天猫に取られてしまうような印象を抱くが、今回は天猫のプラットフォームを使って実店舗のクーポンを配布している点がポイントである。

中国の小売(特に洋服や靴など対面販売型の店)では、従業員の殆どは売上に応じた歩合給をもらっている。日本の小売でも歩合給は存在するが、中国はそのウェイトが特に高い。中には基本給が相当抑えられている会社もあるので、もしこの歩合給が減るようなことがあれば、彼らにとっては死活問題になる。日本のオムニチャネル先進企業のように、人事評価にEC売上も対象にしているような企業はまだまだ少ない。実店舗の売上がオンライン(EC)に取られるようなキャンペーンであれば、現場スタッフの協力はまず得られない。POPすら撤去されるかもしれない。現場スタッフを巻き込む為には必須のスキームだったと言える。

 

② Online → Offline

もう一つがいわゆるO2Oの取り組みである。現在、天猫アプリのフッター中央には、「逛商圏」という位置情報に連動して実店舗の情報を中心に提供するメニューが存在する。平常時から一部のブランドはクーポンを出したり、ECへ誘導したりしているが、双11時はいつもより多くのブランドが実店舗用クーポンを用意して、店舗送客をおこなった。

天猫の「逛商圏」をタップすると最寄りの商業施設が表示されるので、その商業施設で興味があるブランドをクリックしてクーポンを取得、そのクーポンをきっかけに店頭へ来店、該当のクーポン画面を販売員へ提示すれば特典を享受できる仕組みだ。もちろんクーポンを提供せず、店舗情報だけのブランドも多数存在する。

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この①②の取り組み、ブランドによって特典内容は異なるが、基本的に実店舗への送客を目的にされている。であれば、アリババにとってこの取り組みはどういった意味があるのだろうか?肝心の売上が実店舗で計上されると、アリババにとってはマイナス効果になるのではないか?

アリババの張勇CEOはメディアから今年の売上について聞かれた際、次のように語っている。

「天猫、淘宝、飛猪、口碑は双11の売上に含んでいるが、盒馬、饿了么、銀泰、大潤発等の売上は双11に含めていない。(中略)オフライン型小売のうち、アリババのテクノロジーを使った取り組みのオンライン部分は双11の売上に加算している。(中略)我々が言及しているのは双11の利益ではなく、取引規模である。」と。

ハッキリしない説明ではあるが、今年の双11の売上2,135億元に、これら実店舗の売上の一部が含まれている可能性がある。オンライン・オフライン問わないプラットフォーマーとして、自社の収益だけでなく、双11全体の規模を大きくしていこうという考えなのだろう。

 

アリババにとっての課題

新小売の構想を進めるべく、アリババグループ全体に取り組みを広げ、実店舗の巻き込みも増えて最高売上を達成。一見何も問題ないように思われるアリババの双11。しかし、冒頭申し上げたように、上海の街を見た限り、実店舗が盛り上がっていないのだ。当然、実店舗の努力不足、オンライン(EC)に顧客が奪われているからという指摘がありそうだが、アリババと共同するはずの店、共同した店も盛り上がりに欠けた。アリババ自体、実店舗をもっと活性化させられると思っていたのではないだろうか?

(1) 有力パートナーの取り込み

アリババはこの2年で800億元以上もの金額を実店舗小売企業に出資し、経営に参画してきた。しかし、小売業全体で見れば、まだまだ彼ら自身で出来る範囲は限定的だ。新小売の構想を広げていくには、実店舗で力を持った企業を巻き込んでいく必要がある。

今回の双11で象徴的だったのが浦東にある百貨店「第一八佰半」だ。下記写真を見ていただきたい。去年と今年の11/11の同じ時間帯に撮影したものである。

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去年はアリババと共同で大々的に双11に取り組んでいた。八佰半の店の前では、規定の時間に紅包が貰えるということで多くの人が集まり、スマホ片手にゲームに講じていた。しかし、今年の八佰半にアリババの露出は一切なし。一応、独自に双11のプロモーションを縮小して実施しているものの、告知は限られており、顧客の賑わいも少なかった。

八佰半と言えば、アリババが戦略提携している国営の「百聯集団」に属し、年間約40億元を売る上海ではNo.1の百貨店である。本来アリババの立場であれば、大都市上海で、新小売の象徴的な位置付けとして一番取り組みたい相手のはずだが、今年はアリババとの取り組みがなかった。

もともとラグジュアリーブランド中心の高級ショッピングセンター等は双11の取り組みを殆どしていないが、中価格帯の商業施設でも、市の中心部で力のある商業施設ほどアリババの存在を避けている感が見て取れた。一方で前述の龍之夢しかり、住宅地や郊外にあり、自店だけでは集客を掛けづらい店ほどアリババのプラットフォームを活用している。

 

(2) 参画企業の管理

2つ目は、小売がこういうプロモーションをする際のあるある話だが、取り組みが店頭の現場に落ちていないということである。

下記写真は、天猫で実店舗用クーポンを配布していた宝飾ブランドと婦人服ブランドである。天猫上でクーポンを取得して店頭を見に行くと、店頭にはPOPもなければ、天猫の文字も一切出ておらず、このクーポンが本当に使えるのかどうか分からない。別のブランドで、店員にクーポン画面を提示してみたが「分からない」との回答だった。

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私の中国語のレベルの問題もあっただろうが、概して中国人は自分が知らないことに対して誰かに聞いて確認することもなく、自分の知識の範囲内で断定的に答える傾向がある。全てがこのような店ばかりではないだろうが、私が数店聞いただけでもこのような状態なので、同レベルの店はかなり存在したのだろう。

オンライン(EC)の世界の人からすると、「なぜこんな簡単なことができないのか?」と思われるかもしれない。しかし、教育水準も異なる多様なスタッフ(販売員)、シフト制でスタッフ間の連絡も上手くいかない、本部からメールしているのにちゃんと見ていない、こういう問題は実店舗の現場では往往にして存在する。 

これまで彼らが取り組んできた天猫・淘宝であれば、オンライン上での行動が購買体験の大部分を占めている為、プラットフォーマーとして管理できる範囲が大きかった。天猫・淘宝には顧客からの問い合わせに売り手は◯◯分以内に返答しなければならないというルールがあるそうだが、これも「問い合わせ」というデータが発生することによって初めて管理ができる。

オフラインの実店舗の場合、仮にアプリ等を使って誰がどこにいる位の情報は分かっても、実際に顧客と販売員の間で何がおきているか、彼らにも分からない。加えて実店舗では、その販売員とのやりとりが購買体験の最も大きな要素を占めている。いくらオンライン上で個人を分析し、購買確率の高い優良な顧客にアプローチできたとしても、店舗の現場で良い体験を提供できなければ顧客満足は向上しない。肝心の買い上げにも繋がらない。DiDi等で使われている顧客からの評価制度も、直接雇用関係のない現場の販売員には機能し辛いだろう。実店舗には現状のアリババでは管理しきれない範囲が多いのだ。

 

新小売の実現に向けて

今回、グループ外の実店舗との取り組みは、クーポンや紅包等に限られていた。O2Oという言葉が日本でも既に使い古されているように、上記で記載したような取り組みは規模感は全く異なるにせよ、日本の小売でも数年前から普通に実施されているレベルの内容である。

彼らが目指すオンラインとオフラインを融合した新小売とは、「OMO」とも言い換えられる。OMO(Online Merges with Offline)とは、顧客の体験をオンライン・オフライン隔てなく提供することだ。中心にあるのは「顧客体験」である。様々なデータを活用して顧客を "理解" し、顧客に寄り添い、顧客により良い体験を提供する為に、実店舗、接客、EC、WEB、SNS、あらゆる資産をチユーニングする必要がある。

現状は、アリババならではのデータを活用して、「顧客一人一人に最適化された新たな顧客体験の提供する」というレベルには程遠い。とりあえず、今回はアリババのプラットフォームを使う小売が増えたというスタート段階である。プラットフォーマーとして新たな小売のカタチを作るにはまだまだ課題は多い。

「ニューリテール(新小売)」に続いて、2017年には「ニューマニュファクチャー(新製造業)」の概念を提唱したアリババ。小売企業をどんどん買収したように、今後は製造業の買収を進めていくのかもしれない。アリババがバリューチェーン全体を自ら構築できるようになった時、彼らが本当に思い描く新小売のカタチが実現するのかもしれない。

1年で日本の百貨店の総面積が開発される上海

何かとTech方面では注目を集める中国の小売業界だが、従来からの実店舗型小売(※ここではショッピングセンターや百貨店等を指している)の動きも活発だ。

上海に来てから1年半が経過したが、その間にも様々な商業施設が開業した。2017年5月には郊外の七莘路に「VivoCity」が12万平米で、2017年9月には紫藤路に「万象城」が超巨大な24万平米でオープン。開発は郊外だけなく、中心部の住宅地である中山公園にも「Raffles」が開業。商業地区の既存施設でも全面改装等が相次いでいる。

日本の小売関係者なら、上海に来て見に行くべきは盒馬鮮生や無人コンビニだけではない。圧倒的な規模・スピードで開発が進む実店舗型小売も是非チェックいただきたい。

 

上海は全国でも一番の開発件数

2018年開業予定の商業施設がまとめられている。出典は中国の小売業界の情報を集めている联商网

まず、これは2018年上半期に中国各都市で開発された商業建築面積2万平米以上の施設(ショッピングセンター・百貨店・専門店等)の件数である。1級都市が上位を占めているが、その中でも上海が18件と群を抜いて多い。2万平米と言えば、それなりに大きい施設である (参考:日比谷ミッドタウンの商業エリアの面積が1.8万平米)。もっと小さな施設も合わせると、その数はさらに増える。

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その18件の中身がこちら。上半期の中では、地下鉄7号線の行知路駅近くにある「静安大融城」が19万平米と圧倒的な大きさ。

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日本と同じように、ここ上海でも郊外には車で気軽に行ける巨大なショッピングセンターが増えている。近隣住民の生活インフラとなるスーパーや多様な飲食店、子供向けの教育施設、映画館など、わざわざ都心部に行かなくても用事が済むワンストップ型の品揃えを実現している。この辺の詳しい内容については、また別の機会にまとめてみたい。

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2018年6月にオープンした静安大融城

続いて、こちらは8月以降に上海で開業予定の施設。上半期で18施設がオープンしたわけだが、これからさらに38施設ものオープンが予定されている。

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合計56の施設を地図上にマッピングしたのがこちら。たしかに郊外の開発が目立つが、決して郊外だけでもないことがお分りいただけるであろう。

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上海で2018年開業&開業予定施設の所在地(筆者作成)

 

2018年開業予定施設の総面積は520万平米

実際のところ、上記一覧の中にはどう考えても2018年度中には間に合わないだろうと思われる施設も含まれている。また仮にオープンしたとしても、中国では館の開業時には全ての店(テナント・ショップ)は開いておらず、館のオープン以降、徐々に開いていく「ソフトオープン型」が主流なので、各施設が完全な状態になるには暫く時間が掛かるだろう。

しかし、開業時期は前後する可能性があるとしても、上海一都市の1年で56もの施設が開発がされているのである。この56施設の面積を単純合計すると、522万平米にもなる。522万平米と言われても想像つかない方が多いと思うが、日本の全国の百貨店の総面積が570万平米である。つまり、上海一都市の一年で日本の百貨店全ての面積と同じ大きさが開発されているということである。その凄まじいボリュームが想像いただけただろうか。

これが「中国・上海はまだまだ経済発展途中だから、それだけ店を作っても大丈夫」ということであれば問題ないだが、現実は決してそのような状況ではない。

 

供給過剰の商業施設

下記は、上海ショッピングセンター協会の報告を元に、ここ12年間のショッピングセンターの売上と売場面積をまとめた表である。

出典:上海购物中心的真实现状:是时候敲警钟了_搜铺新闻

ちなみに、2017年時点で上海のショッピングセンターの総面積は1,750万平米だが、仮に前述の2018年開業予定施設(※ショッピングセンターだけでなく百貨店等も含む)の面積522万平米を加えると、その総面積は2,200万平米以上になる。東京都の小売業の総売場面積は約1,000万平米と言われている。"上海市" と言っても、その大きさは6,340万平米(大分県群馬県くらい)もあるので、東京都の約2,200万平米とは比較にならないが、上海のショッピングセンターだけで東京の総小売面積の倍以上もあるというのは、なかなか信じがたい数字だ。

上記表に寄れば、2006年から2017年までの僅か12年の間に、上海のショッピングセンターの売上は約5倍に、売場面積は約5.2倍に成長している。一見、売場面積に比例して売上も伸びてきたように思えるが、これを年度別の成長率で見ると状況は異なる。

上記表の売上と面積の成長率のみを抜き出したグラフがこちら。

2013年を境に売上と面積の成長率は逆転している。売上の成長率が右肩下がりで鈍化しているのに対し、面積は右肩上がりで上昇。年を追うごとに二つの成長率は乖離していっている状況だ。ここ上海においては、明らかに商業施設が供給過剰に陥っているのだ。

また、中国の小売におけるEC化率は15%と言われている。日本の6〜7%から比べると倍以上の値で、韓国に次いで世界No.2の高さである。実店舗と天猫や京東を筆頭とするオンラインショッピングとの競争も日本以上に激しいのが実態である。

このような供給過剰な開発によって、上海では既に中心部の施設でもテナントが埋まらず、売場を仮囲いしたままの店もよく見かける。そんな状況にも関わらず、旺盛な開発は今も続いている。成長〜成熟に至るスピードが日本より圧倒的に早い中国・上海。今後も継続して生き残っていける商業施設は、本当に特徴化された施設や、圧倒的に魅力ある商品や体験が得られる施設に限られるだろう。このままでは、そう遠くない時期に上海の商業施設 "閉鎖" 一覧をご紹介することになりそうだ。

 

アリババ初のショッピングセンター「親橙里」がオープン

1. 実店舗への投資を加速させるアリババ

もはや中国の小売業を語る上で欠かすことのできない存在となったアリババ。そのアリババが2018年4月28日、杭州に初のショッピングセンターを開業した。その名も「親橙里」(簡体字:亲橙里/読み方:チンチャンリー  ※以下簡体字で表記)。

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"新零售"(新小売)の構想を掲げて、オフラインの世界へ積極的な展開をするアリババ。新小売を象徴する存在となった食品スーパーの「盒馬鮮生」をはじめ、百貨店・ショッピングセンターを手がける「銀泰」への投資、国営の小売グループ「百聯集団」との提携など、矢継ぎ早に実店舗型小売企業への投資・提携を進めている。わずか2年弱で、その投資額は累計 800億元(約1兆3600億円)にも及ぶ。

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アリババの実店舗型小売業への投資状況

[出典]三菱東京 UFJ 銀行(中国)経済週報「小売業の革命を主導する大手 2 社の競合」 

そんな彼らが自ら初めて手がけるショッピングセンター「亲橙里」とは一体どんなものなのか?今回はその様子をレポートする。

 

2. アリババ従業員の為の施設? 

場所はアリババのお膝元

訪れたのはオープンから4日目の5月1日、中国は労働節の3連休の最終日に当たる。

場所は杭州のアリババ本社の隣りに位置する。街の中心部からは離れており、地下鉄も直結していないので、タクシーを使う必要がある。高鉄(新幹線のようなもの)の駅(火車東站)からであれば、地下鉄を乗り継いで2号線の文新駅まで行き、そこからタクシーで向かうのが良いだろう。

もしくは火車東站からアリババ本社まで直通バスが1時間に1本ほど出ているので、時間が合えば便利だ。但し、利用するには「微巴士」というアプリを使って、切符の事前購入&乗車時の提示が必要だが、このアプリのID登録には中国携帯が必須なので、日本からの出張者には厳しいかもしれない。

[住所]杭州市余杭区文一西路与常二交叉口

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話は逸れるが、以前「地下鉄もスマホ決済で完全なキャッシュレス社会へ」で上海の地下鉄事情を紹介したが、さすがアリババのお膝元である杭州杭州の地下鉄はAlipayを使用すれば切符を買う必要なく、スマホ決済で乗車が可能だ。Ailpayとの接続を認証し、乗車&降車時にAlipayの「Pocket」に収納された杭州地鉄乗車码からQRコードを呼び出す。改札機にQRコードをかざせば自動的にAlipayで決済される。

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亲橙里がアリババの隣にあるには理由がある。

ショッピングセンターの周辺はいわゆる「アリババ村」であり、周りには多くのアリババ従業員が住んでいる。このショッピングセンターにも従業員の住居施設が隣接している。しかし、この辺りは街の中心部から離れていることもあり、近隣に商業施設は殆どなく、従業員はこれまで不便な生活を強いられて来た。そんな従業員たちに福利厚生の意味合いを込めた施設が、この亲橙里である。

一般の商業施設とは異なる品揃え

営業面積は約5万平米とのことだが、メインの建物だけで見るともっと小さい。フロア構成はB1階〜5階までで50弱のテナントが入居する。

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テナント構成を見ると、従来の一般的なショッピングセンターや百貨店とは大きく異なる。現在、中国のショッピングセンターや百貨店で売上の柱になっている化粧品は1ブランドしかなく、洋服のブランドも非常に少ない。ましてやラグジュアリーブランドなど存在しない。実に飲食店が半分以上を占める特異な施設だ。

中国メディアによると、これらの飲食店はアリババの従業員たちに選ばれた店とのこと。他にも最上階には映画館、地下にはスーパー(※後述)、歯医者、家電・リビング関連のテナントが多く、都心部の商業施設とは品揃えが違っている。

それもこれもアリババ従業員の為ということなのだろうか?それとも、有力ブランドを誘致することができなかったのだろうか?

 

3. 亲橙里の見どころ

自主運営ショップ

飲食店が半分以上占める亲橙里の中で特徴的なテナントとして、アリババ自らが運営するショップが4つ存在する。

①淘宝心選f:id:horamune:20180519215247p:plain

タオバオが展開するショップであり、1階中央の最も良い場所に店を構える。無印良品をかなり意識したと思われるショップであり、リビング雑貨を中心に文具、家電などを扱う。商品自体は手頃な値ごろ感で無難なデザインということもあってか、ショップ内は多くの人で賑わっていた。

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売場内には、ところどころにテクノロジーを生かした設備が用意されている。

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商品をかざすと自動で認識して商品説明をするサイネージ

タオバオのアプリでバーコードを読み取れば、商品の詳細情報を知ることができ、そのままタオバオで注文することが可能。

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盒馬鮮生と同じ電子棚札が使用されている

会計は全て壁面に設置されたセルフレジで行う。顧客は商品のバーコードをレジで読み取った後、自身のタオバオの会員QRコードをスキャン。アプリに紐づけた決済方法で支払いする流れとなる。

実店舗でもタオバオのアプリを使って会計することによって、アリババ側はオフライン・オンライン問わず、顧客が何を購入したかを補足することが可能となる。

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②天猫精霊f:id:horamune:20180521192047p:plain

日本でもGoogleAmazonをはじめAIスピーカーの競争が激化しているが、ここはアリババが手がけるAIスピーカーのショップ。商品の展開数はかなり限定されているが、アリババのAIスピーカーを体験できるアンテナショップとしての位置付けだ。

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音声指示によって光が上下左右に動く

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映像と音声の特別体験が可能

 

③天猫国際
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 TMALL(天猫)で扱う海外からの輸入商品を実際自分で試用体験することができるショップ。杭州の西湖近くの銀泰百貨店内にオープンした1号店に続く2号店とのことらしいが、私が視察した時にはまだオープンしていなかった。 

 

④盒馬鮮生f:id:horamune:20180521214824p:plain

拡大を続けるアリババ傘下の食品スーパー「盒馬鮮生」は、地下全てを使って展開。盒馬鮮生の詳しい説明については、過去記事をご覧いただきたい。

Amazonの先を行く食品スーパー「盒馬鮮生」 - ONE HUNDREDTH

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盒馬鮮生の売りである充実した海鮮コーナー。その場で調理してもらうことが可能。

ここの盒馬鮮生は過去上海で見た店舗より、飲食スペースがかなり大きく取られている。「30分以内の配達」を謳い文句にしたECメインのスーパーのように思わているが、実店舗の体験要素を特に重要視していることが分かる作りだ。

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盒馬鮮生の店舗の特徴である天井に張り巡らされた商品運搬用のレーン

オープン直後の3連休ということで、ショッピングセンター内はどのフロアも賑わっていたが、最も人が多かったのがこの盒馬鮮生。それだけ近隣住民からの期待も高かったということだろう。

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ピザもその場で焼いてくれる変わり種の自動販売機。

 

テクノロジー&データの活用

2つ目が、最もアリババらしいテクノロジー&データの活用だ。"デベロッパー" としてのアリババは、従来の商業施設とどのような違いを出せるのか?

①Virtual Fitting System

これは中国の「Cloudream(雲之夢)」という会社が手がけるVirtual Fitting Systemだ。2014年に深圳で設立された主に3DとAI技術を研究するテクノロジー会社だが、近年、アリババとの連携を深めており、新小売のパートナー企業の一つになっている。

《 Virtual Fitting Systemの機能 》

  1. 画面の前に立つと、自動的に対象となる人物を撮影。
  2. どのような人かを画像解析して、属性(身長・体型・性別等)を判別。顔だけ画像を取り込む(3D風)。
  3. その人の体型や雰囲気に合わせて、洋服をスタイリング提案。
  4. 画面をスワイプすると画面上の自分に商品を着せ替えることが可能。画面に表示されたQRコードをスキャンすれば、そのままTMALL(天猫)で商品購入もできる。

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この Virtual Fitting System が設置されているのも、新小売のモデルブランドの一つになっている「MiSHOW」である。アリババは、この「MiSHOW」や同じくアパレルブランドの「Kerr&Kroes」等と協力。アリババの膨大なデータを活用して店舗周辺にいる顧客にアプローチしたり、テクノロジーを活用した新たな顧客体験を模索したり、オンライン・オフラインを問わないオムニチャネルの様々な実験をおこなっている。

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MiSHOWの売場内には別のサイネージも設置されており、多くの顧客が珍しそうに足を止めて、この機能を体験していた。

また、この Virtual Fitting System はMiSHOW以外のショップや、エレベーター前の共有スペースにも設置されており、デベロッパーであるアリババ主導でこのシステムが導入されていることが分かる。

 

②多様なサイネージ

上記の Virtual Fitting System もしかり、亲橙里には、従来のショッピングセンターより多種多様なサイネージが設置されている。

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吹き抜けには巨大なサイネージが設置されているが、ここでは、館内の至るところに設置されたカメラでモニタリングした顧客の属性や館内の混雑状況などを表示している。恐らく、ここで表現されているのはデータのごく一部で、裏側ではもっと多様な顧客分析がされているのだろう。

また、タオバオ会員であれば、彼女・彼氏・家族のために、このサイネージで使って誕生日のお祝い動画を配信できるとのこと。そして、その配信タイミングも、館内のセンサーで顧客の位置を識別して、映像が自動的に流れ出すということだが、果たして本当だろうか?

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[画像出典]阿里巴巴亲橙里商城观察日记和思考

下記は、Web広告のように顧客一人一人の嗜好・特徴、はたまた消費行動まで分析して、その人にパーソナライズされた最適な情報を流すことができるとのこと。

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今では珍しくないが、人の顔を認識し、ARで加工した写真を取れるサイネージ。日本でも時々見かけるが、亲橙里には大量の機械が設置されている。 

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スマホを活用したプロモーション

オープニングでは、一般の商業施設でもよく見られる買上金額に応じたプレゼント企画、ステージでの大道芸イベント、アニメコスプレのイベントなど、様々な催しがおこなわれていたが、アリババならではのスマホを使った販促も実施されていた。

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4月28日〜5月1日の3日間限定で、館内に貼られた亲橙里のロゴをタオバオのアプリでスキャンすると、TMALL(天猫)のキャラクターである黒猫が出現。それを捕まえると紅包(ホンバオ)が貰えるというもの。

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日本の方ならこの画面を見ると「Pokemon GO」をイメージされるかと思うが、これはアリババが大きなイベント・プロモーションを実施する際に活用している位置連動のARゲーム。昨年の独身の日にも活用されていた。詳しくは下記を参照いただきたい。

アリババのものではなくなった独身の日 - ONE HUNDREDTH

その他、スマホ上でパスワード入力すると抽選で紅包が貰える企画なども実施されていた。 

 

4. 亲橙里は有力な商業施設になれるか?

それなりに見どころの詰まった亲橙里だが、ショッピングセンター全体としての評価はどうだろうか?

正直、まだまだ課題は多いと思う。

ショッピングセンターの最大の価値である商品・サービスの面では、物足りないと言わざるを得ない。恐らく日本人がここを見に来た時、欲しいと思う「モノ」は殆どないだろう。中国で人気のある有力ブランド・テナントも入っていない。現在のところ、この亲橙里が杭州市内の「杭州大厦」や「万象城」などの有力施設を、売上という表面的な形で脅かすことはないだろう。

また、アリババならではのテクノロジーの活用も、商品・サービスの不足分を補うほど素晴らしい顧客体験を提供できているかと言えば、現状は否だ。

だが、これで「亲橙里はダメ」「アリババでもやっぱり実店舗は難しいのか」と判断するのは時期尚早である。

冒頭で記載したように、彼らは既に傘下の銀泰や提携する百聯など、実店舗のノウハウを持った企業のリソースを活用できる状態にある。また、TMALL(天猫)・タオバオでは、国内外の有力ブランドとの関係も構築できている。中国で圧倒的な影響力を持つ彼らが本気になれば、協力するテナント・ブランドはいくらでもあるだろう。敢えて、そこまではしていないとしか思えない。

この店のターゲットは、あくまでアリババの従業員や近隣の住民である。杭州中心部に住む購買力の高い富裕層に、わざわざ来店してもらおうとは思っていない。「食」を中心にした近隣の顧客ニーズを叶えられたら十分なのである。

また一方では、"アリババのショールーム" としての位置付けもあるだろう。アリババを訪問したクライアント・取引先・関係者に、隣にある亲橙里を見てもらい、彼らの考え・コンセプトを実感してもらうには絶好のモデル店舗である。

亲橙里は、あくまでアリババの壮大な実験場なのだ。

亲橙里を使って彼らが考える新小売の様々な取り組みをスピーディーに実験し、そこで得られた顧客の反応をデータ化し、分析&検証する。この流れを繰り返し繰り返し実行していくことで、従来の実店舗型小売業が何十年かけても得られなかったノウハウを、彼らは高速で獲得しようとしている。そして、そのノウハウを買収した実店舗小売に注入していき、商品・サービスも優れ、且つ、従来とは全く新しい体験が得られる革新的な小売業を作ろうとしているのではないか。

アリババが考える新小売の完成形ができた時、従来型の実店舗小売業がそれに対抗しようと思っても時既に遅しである。その差は、もう埋めることの出来ない開きになっているはずだ。