中国で広がる無人店舗の波
無人コンビニ BINGO BOX
先月、上海に無人のコンビニが登場した。日本のメディアでも紹介されたので、知っている人もいるだろう。名前は「BINGO BOX」、中国表記は「缤果盒子」。当て字の缤果(Bīnguǒ)に、盒子(Hézi)=小型の箱の意味 を合わせた模様。
中山市賓哥網絡科技というベンチャーが開発し、フランス系スーパー「欧尚(オーシャン)」と台湾系スーパー 「大潤発」の合弁会社が運営をサポートしているらしい。今回上海にOPENしたのは、その欧尚と大潤発の敷地を使った2店舗。
まずは、このオフィシャルサイトにある動画を見てもらうとイメージしやすい。
中国式 Amazon Go
OPEN早々の6月24日にスーパー欧尚の店を見に行ってみた。12号線の宁国路駅から徒歩5分、欧尚の駐車場にポツッと置かれている。
コンビニというよりは、KIOSKのイメージ。
入口は鍵がかかっており、入店するにはID登録が必要。
まずは扉横のQRコードを読み取り、WeChatの公式アカウントをフォロー。返されたメッセージからフォームに飛んで、携帯番号とパスワードを登録して初めて扉が開く仕組み。Amazon Goは専用アプリを使って入店するが、中国では日本同様にアプリインストールのハードルは低くないので、WeChatとこちらで一般的な携帯番号を組み合わせた個人認証方法が採用されている。
※ちなみに、中国では公衆WiFiなどを利用する時、携帯番号を入力して、SMSで返されたパスワードを登録するケースが多い。ほとんどの場合、中国の電話番号にしか対応していないので、日本からのマーケターが視察に来たとしても、日本の携帯では入店すら出来ないのでご注意を。
店舗内の様子。SKUは500ほどらしいので、飲料、菓子、生活雑貨など取り扱いアイテムは限られている。
Amazon Goでは、画像解析や音声・センサー等を組み合わせて顧客行動を解析しているようだが、BINGO BOXでは全商品にRFIDが貼り付けられている。1元(約16円)のチョコレートとかにも貼付されている。
RFIDと言えば、数十年前からあるテクノロジー。過去、自分も10年以上前に業界のSCM(Supply Chain Management)効率化を目的とした会合に参加したことがあるが、10年以上経った今も一向に広がっていない。未だに一部のアパレルが独自に活用しているレベルに留まっている。普及しない最大の理由がRFIDの価格。
調べてみたら、未だに1枚10円以上はしているみたい(もちろんロットに寄るけど)。中国だからRFIDが劇的に安いということないだろうし(そもそも中国の物価が安いというのは既に幻想)、それを1点1点商品に貼る手間を考えると、1〜2元の商品にも貼るってなかなか理解し辛い。
Amazon Goでは会計は不要。店から商品を持って出るだけで清算されるが、このBINGO BOXは、レジ会計が必要。但し、レジと言っても無人なので、セルフ会計。会計台に商品を置くと、自動でRFIDの情報を読みとって商品が特定されるので、横のディスプレイに表示されたQRコードを読みとって支払いをおこなう。決済方法はAlipayかWeChatかアプリの3 択。中国ではもはや当たり前だが、現金もクレジットカードも使えない。支払いが完了すると、RFIDのステータスが「支払済」に書き換えられるので、商品の持ち出しが可能になる。
※オリジナルのアプリもあるとのことだが、中国のアプリストアでも発見できず。
入店後、扉の鍵はすぐに閉まるが、購入済の商品を持っていれば、出口付近のセンサーが「支払済」になったRFIDの情報を読み取って自動的に鍵が開く。未会計の商品があれば、当然鍵は開かない。何も買わなかった場合は扉横のQRコードを読み取ると鍵が開く。
誰かに付いて無理やり商品を持ち出すことは可能だが、未会計の商品を持ち出ししようとすると警告音が鳴る。当たり前だが店内には防犯カメラも付いているので、個人が特定されやすい中国・上海でわざわざそのようなリスクを取る人は少ないのかも?
無人店舗は広がるのか?
正直、洗練されたAmazon Goの顧客体験(もちろん味わったことはないが)とは雲泥の差があるし、劇的な顧客満足があるかと言われると、そんなことはない。QRコードをスキャンしたり、返って面倒臭いと感じる顧客も少なくないと思う。でも、「商品の実物を触れる大きな自動販売機」と考えると、意外に違和感ないのかも?と感じた。
また同じ小売業に携わる人間から見た時、当たるか外れるか分からないし、未完成ながらも、こういった取り組みにスピード感持ってチャレンジする姿勢は素直に尊敬する。中国人・中国企業のこの姿勢は大いに見習う必要がある。
運営会社曰く、15平米の無人コンビニと40平米の従来コンビニを比べると、建設コストは1/4にとどまるうえ、高騰している人件費は不要、家賃は下がるため、運営コストは15%以下にとどまるとのこと。今後の展開に期待したい。
…と言いつつ、上海の高温に対応できなかったのか、自分が見に行った店舗はいきなり休業したとのこと(笑)
中国には「BINGO BOX」以外にも既にいくつかの無人店舗が登場しているので、今後視察してみたい。
◆F5未来商店
広州の佛山で試験運営をしていた模様。アメリカに登場した「eatsa(イーツァ)」みたいな感じか?無人とは言いつつ、バックヤードにはスタッフがいる接客がないだけの店舗。
◆小e微店
いまいちよく分からないが、オフィスビル向けのセルフ会計店舗か?
◆便利蜂
◆TAOCAFE淘宝会员店
※これは展示会での期間限定店舗。
さすが、中国。すごいスピード感。
はじめに
思いがけない異動
忘れもしない。
2016年11月21日、社長室に呼ばれて「上海に行ってくれ」と受けた辞令。
青天の霹靂とはまさにこのこと。
超ドメスティックな会社に勤めて19年、まさか自分が海外転勤になるとは。
それから3ヶ月の引き継ぎ&準備期間を経て2017年3月から上海に着任。早くも4ヶ月が経過した。
本当は家族で来たかったが、子供が小さく、空気の汚れた中国ではとても育てられないという妻の不安があり、家族は日本に残して一人でやってきた。
こちらに来て様々な環境変化があったけど、一番の違いは、圧倒的に自分の時間があるということ。日本では深夜に帰宅するのが日課になっていたが、仕事内容が変わったこともあって、今では普通に19時には家に帰って来れる。中国語の学校以外は特に予定もなく、休日の家族サービスも必要ない。全てが自分の時間。まさにフリーダム。
今までは「自分は忙しいから仕方ないよね」と忙しいことを言い訳にして、会社の仕事しかしてこなかった。そんな仕事人間の自分に、おもいっきり時間の余裕ができてしまった。じゃあ、異国の地で一人何をする?
1/100の存在
以前、恩師であるコミュニケーション・ディレクター 佐藤尚之(通称さとなお)さんから言われたことがある。
「君には仕事以外で、趣味でも何でも良いから、好きなものはないの?」
普通の人なら、ゴルフが好き、ゲームが好き、暇さえあれば映画見に行くとか、人それぞれ色んな好きなことがあるだろう。実際、自分のまわりの友人たちも、トライアスロンやってます、落語が好き、トレランやってます、車大好き、ラーメン大好き、毎日色んな店のカレー食べてます、和菓子なら任せろ、等々、多彩な趣味・嗜好の人が多い。
普通の人ならある趣味、ただ、自分にはそれがない…。
学生時代はサッカーやバレーボールをやっていたが、それが大好きというほどではない。「日本代表の試合は欠かさず見る」とか、そんなことはまぁない。スキーやスノーボード、ゴルフ、流行や年齢に応じた機会でそれなりに色んなものは経験してきたし、映画や音楽もそれなりには見るし聞く、でも、決して一つの事にどっぷりのめり込むことはなかった。
唯一、自分が昔から継続して興味・関心を持ち続けているのは「ファッション」だけど、それとて、◯◯デザイナーが大好きとか、このブランドのこだわりは◯◯でとか、今年のトレンドは◯◯とか、人様に語れるようなものではないし、限定品が発売されたら並んでも買うとか、そんなモチベーションも持ち合わせていない。単にこんなコーディネート・アイテムがカッコ良い、オシャレと考えるのが好きなだけ。
前述のさとなおさんが、何度か言ってたことがある。それは、「100分の1を作れ」ということ。
佐藤:たとえば僕は、広告業界で「1万人に1人」という位置には入っていないと思いますが、「100人に1人」という位置にはつけていると思っていて。同じく、「食に詳しい人(食の本を数冊出している)」「ネット体験に詳しい人(個人サイトを20年やっている)」というくくりでは、「100人に1人」のレベルに入っていると自負しています。この属性を並べて「広告がつくれて、食に詳しくて、インターネットに詳しい人」とすると、単純計算で1/100×1/100×1/100=「100万人に1人」という割合になり、一気にレアな存在になるんです。
プロスポーツ選手のように、その分野で1万人や100万人に1人の存在になるまで極めるのは相当難しいけど、100人に1人の存在なら頑張ればできるよねと。その1/100の存在を複数持っていたら、それを掛け合わせることによって希少な存在になれるよねということ。
考えてみたら、芸人が作家やってみたり、絵本を出したり、◯◯芸人とか言ってるのも、芸人 × ◯◯ と別の要素を掛け合わせることによって自分を差別化して、独自のポジションを築いているのだろうし、昔からよくある俳優が料理番組を持ったり、◯◯インストラクターをやるというのも同じ発想だろう。
小売業に就職して約20年が経つ。仮に「日本の小売」については1/100の存在になれていたとしても、他に掛け合わせ出来る1/100はある?
1/100を目指して
40才を過ぎて初めての海外生活。自分の時間はたっぷりある。新たな1/100を作るには絶好の機会。
上海に来て4ヶ月、本来なら日々色んなことが新鮮なはずなのに、思ったほどインプットが少ない。もしインプットが足りていないなら、強制的なアウトプットをすれば良い。そうすれば、おのずとインプットも増える。これ鉄則。昔、セミナーでTRANSITの中村さんも言ってた。「アウトプット力を高めることがマーケティング力を高める」と。じゃあ、何をアウトプットするの?
中国は日本とは比べ物にならない世界一のモバイル先進国。スマホさえあれば本当何でも出来る。財布も要らない。中国はパソコンが普及しないままスマホの時代が来たので、生まれながらにモバイルファースト。そして、スピード感・実行力も素晴らしい。日本のように机上の空論を重ねるようなこともない。とりあえず、やってみる文化。
幸い自分は日本にいる間、数年間、デジマ(デジタルマーケティング)に携っていた。社内ではデジタルの人と思われている。まわりには日本のマーケティング界隈のトッププレイヤーたちもいる。この中国でこの分野を追っていくことによって、もしかしたら、自分に新たな1/100が出来るかもしれない。そんな自分への期待を胸にブログを開設してみた。
開設してみたものの殆ど更新できなければ、今までの自分と同じということw